2000.6.17 ・◆・ 神澄 裕紀
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聖地への帰り道、夢の守護聖は、目まぐるしい出来事を反芻していた。
「結果、オーライだったけど…。よくまぁ、あんな馬の群れが現れたよねぇ。
あの男もあんな事は始めてだって…」
そこまで口にして、ハッとしたように隣のターバンを巻いた頭の方を見た。
相変わらず、彼は、のほほーんと人を食ったような笑顔をしている。
「いやぁー、やはり、火急の事態ほど、あの人が引き立つ状況はありませんからねぇ…。
私もね、あんなに集まるとは思わなかったんですよ。
いえねー、ゼフェルが持たせてくれたコレを、逆に作用させただけなんですけれど…」
そう言うと、手のひらに乗るほどの小さな機械を出して見せた。
淡々と語る彼に、夢の守護聖は若干の頭痛を感じながら問い返す。
「って…、なに?この機械?」
その質問に地の守護聖は、人の良さそーな、邪心のかけらもないような笑顔で答えた。
「はーぁ、この星は、野生動物も多いですからねぇー。
簡単に言えば、音波による動物避けですかねぇー」
「なるほど…、それで、動物寄せしたわけね…。って、アンタってばっ!!
肉食獣かなんかが来たらどうするつもりだった訳?」
呆れかえる彼に、地の青年は事も無げに答えた。
「いえ、オスカーなら絶対に何とかカッコよく処理したでしょうし…。
命に代えても陛下を守ったでしょうから。それに、アナタもいましたし…。
最悪、またこれを使って追っ払えばいいわけですからねぇー」
「ねぇーって…。
アンタ、オスカーになんか恨みでもあったワケ?」
「はぁ?とんでもない。カッコイイ炎の守護聖に全幅の信頼を置いているだけですよ」
と、地の守護聖は、相変わらず無邪気にニコニコと答えた。
その傍らで…。
この男は、大物なのか、学者ナントカなのか…と呆れると共に、
最悪の事態を想定して、背筋を寒くした『夢』の青年なのであった。
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