カッコイイって? +8+

2000.6.17 ・◆・ 神澄 裕紀 


+8+


その夜、かっこいいの一言を得られなかった男は、書斎に引き篭ると
翌朝に備え、新たな作戦のシュミレーションを行っていた。




一夜明けて…


     「どうだ?」

威厳を込めた声音で問い掛ける…。

「うん」          「かっこいいー」


満面笑みを浮かべた双子が口を揃えた。
それを聞いた炎の守護聖は、面目躍如とばかりにお得意の不敵な笑いを浮かべる。


「なぁ、わかったか?」


金と紅の二つの小さな頭に両腕を伸ばし髪の毛をくしゃくしゃとかき回し…
紅い髪の男は、少し鼻で笑うと決め台詞を吐いた。


「フッ、…カッコイイとは、こういうことサ」






「もうっ、こんなトコロで寝ちゃうんだからぁ〜」

興奮した娘と、少し熱を出した息子をやっと休ませて書斎を覗き込んだ金の髪の妻は…。
書斎でうたた寝する男の傍で、困ったように呟いた。

「ねぇ、起きてくださいってばぁー」

流石の彼も、今日だけは、要らぬ神経を使い疲れきったらしい。


愛妻の気配に安心して眠り込む男の紅い髪を…

吹き抜けてゆく涼しい夜風が、優しく揺らしていた。





「ね。お父様って、あーゆうトコロが、カッコイイでしょ」

あの事件の後、威厳をもって信念を告げた姿を評して、彼女が念願の言葉を、
子供達にそっと囁いた事を、男は知らない。

その言葉に、子供達がニッコリと肯いたことも。


そんなワケで、男の父権をかけた戦いは、まだまだ、続くのであった。






それから後…。

手許から離れて成長した子供達は、訪れた聖地で両親と再会を果たし、
嫌と言うほど父親の硬軟取り混ぜたカッコイイ話?を聞かされる事になるのだが…


それはまた、別のお話…。


・◆ FIN ◆・


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