2000.6.17 ・◆・ 神澄 裕紀
+2+
「はぁー…。子供にも解かり易いかっこいい具体例ねぇー」
ずずーっと、緑茶をすすりながら−何故かこの家には彼専用の湯飲みがあるのだが−
地の『知恵』を司る男は、困惑した表情を浮かべた。
「あーっははは…、びゃーっははは…」
「極楽鳥…。笑い過ぎだ」
地を這うような低い声と、殺気だった薄蒼の視線に身の危険を感じて…。
体を二つ折りにして笑い転げていた派手な服装の青年は、ぴたりと笑いを止めた。
手入れの行き届いた指先で、すっと目尻の涙を拭いつつ、真顔を装う。
「ごめん、ごめん…。悪かったよ。
だって、カッコイイを自認するアンタが、こんな事にてこずってるんだもの」
「うるさい!俺の今後に関わる大事な問題なんだ。笑うなっ!」
彼の尋常ならざる真剣さに、夢の『美しさ』を司るその青年も、肩をすくめた。
その間、じーっと考え込んでいた地の守護聖は、突然、ぽん、と、掌を叩く…。
「あー、いい事を思いつきましたよー」
「え、もう思いついたの?」
「さすがは、宇宙一の知恵者だ!どうすればいい?」
柄にも無いお世辞を口にして、ガバッとにじり寄る赤毛の勢いに圧倒されつつ、
知恵者の男は、ターバンの下に穏やかな笑みを浮かべた。
「はーぁ。それは、ですねぇー」
大の男が三人、頭を寄せ合う光景は、端から見るとかなり滑稽な図だったが…。
とにもかくにも、父親の権威をかけたカッコイイ認識プロジェクトは
始動する事になった………のだった。
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