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ひみつ日記3
誕生日編 * 後編
By 白文鳥   2002.1.121.gif
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   主星には聖地と呼ばれる場所があり、そこには宇宙を司る不思議な力、サクリアを持った尊き女王陛下と守護聖と呼ばれる人々が住んでいると言う事は、この主星では子供でも知っている事、当たり前の常識でございます。ですが、その聖地という場所が具体的に何処にあるのか詳しくは語られないし、また女王陛下や守護聖に実際に会ったという人も、とても少ないのございます。
 宇宙を護り導くという大切な仕事に関わっているのでございますから、とても忙しいのでしょう。人前に滅多にそのお姿を現さないのは当然という事で皆承知しております。

 しかし主星の住人は、皆会った事のない女王陛下と守護聖様方をとても敬愛しております。同じ星の何処かにいらっしゃるという事を肌で感じるのでしょう。

 そしてこのセント・スモルニィ学園は、主星でも最も聖地に近い所、と言われております。実際の距離という事ではありません。それは歴代の女王陛下の殆どがこの学園の出身だからなのです。ですが何時、誰がその女王陛下になるのかは全くと言っていい程わからないのでございます。何百年かに一度女王陛下が交代なさる時があり、学園の女子生徒が次の女王として選ばれるとだけ伝えられております。
 もしかして一緒に机を並べたクラスメイトが後に女王様となるかもしれないわけでございます。
 そして女王のサクリアという物を持った女の子はその力の強弱は別といたしまして、何時の時代にも何人かは居ります。そういった女の子は特待生として学園に迎えられます。
 カタルへナ家のろざりあもその一人でございます。近来稀に見る強いサクリアの持ち主として皆が注目しております。

 守護聖様についてはもう少し解っております。九つの異なったサクリアをそれぞれその身に持つ九人の男性であり、女王陛下の支持の元、そのサクリアを宇宙の為に使うのでございます。そして守護聖様はそれぞれの力を司る一族の中で、最も強いサクリアを持った者がその地位に就くのです。ですが強いサクリアを持っていても必ずしも守護聖様になれる訳ではございません。現在の守護聖様がその地位を降りる事が決まった時初めて、聖地に迎えられるのでございます。それが何時なのかはやはり分かっておりません。

 この九つの力については主星では早くから子供達は教えられます。ですからよく子供向けのクイズ番組などでは初級問題として出たりいたします。
『守護聖様のお力は九種類あります。光、闇、地、夢、水、鋼、風、緑。あともう一つは何でしょう!?』
 あるいは、
『誇りを司るのは光の守護聖様。では…強さを司るのは何の守護聖様でしょう!?』
などでございます。どちらも答えは『炎』ですね。これは即答出来なければ主星では子供と言えどもとても恥ずかしい事でございます。

 さてこの九つの力を持った一族の人々は、必ずしも主星に住んでいる訳ではございません。多くはそれぞれの母星に住んでおります。
 一族の中で強いサクリアを持った子供が生まれると、大体は主星のセント・スモルニィ学園に入学させるのでございます。
 一種のステイタスという事もありますが、サクリアが強い人間は守護聖に就任しなくとも優秀な場合が多く、末は社会の中枢を担ったり、また一族の長となるケースが殆どだからでございます。
 ですから幼少の頃より主星で勉強させるのが常でございます。

 さて、おすかー君は『炎の一族』の首長の息子として『草原の惑星』という所で生まれました。すぐに強いサクリアを持っている事が分かったのでこのセント・スモルニィに留学する事が決まりました。
 もし現在の『炎の守護聖様』の力が衰えたら、すぐに次の守護聖様になれるぐらいであるというのは学園でも有名な話です。
 同じように他の一族からもサクリアの強い少年が何人もスモルニィに留学してきております。皆、一族の期待を背負っているのでございます。


 あんじぇはろざりあが用意してくれたカタルへナ家の馬車の中でこれらの事をずっと考えていました。女王陛下の紋章が入った馬車、と言えば聖地から来た物に間違いありません。聖地からおすかー君に何か用事があって来たのなら、それは守護聖様の交代に関わる話という可能性がとても高いでしょう。
 もしかしておすかー君はもう守護聖様になってしまって、聖地に行ってしまったのでしょうか。そうなったら何処か判らない聖地という場所にずっと行ってしまって、もう会えないのだろうか、と。あのキレイな淡いブルーの瞳をもう見られないのかと思うと、あんじぇはひどく寂しい思いがいたしました。
 でもおりびえ君の言った言葉が救いになっております。

「せいちの馬車にのっていたからといって、せいちに行ったとはかぎらないよ。」
 おりびえ君はそう言って、りゅみえーる君にむかって訊ねました。
「そのとき、あいつはどんなようすだった?」
 りゅみえーる君は少し思い出すように順番に話始めました。
「わたくしがさいしょに見たのは、…門の近くに止まっていた馬車です。女王へいかのもんしょうがあったので、気になって見ておりました。するとおすかーがおとなの男の人ふたりといっしょにやってきて馬車にのったのです。おすかーは…わたくしにも気がつかず、とおりすぎて行きました。」
「う〜ん、やっぱりそれだけじゃわかんないね。ここで考えてもどうにもならないからおすかーの家に行ってたしかめておいで。」
 おりびえ君の言う事は確かです。こんな時はぐずぐず考えても仕方がありません。何しろ情報が少ないのです。少しでも確かな情報を得なければなりません。

 間もなく馬車はおすかー君の住んでいる炎の館に到着いたしました。そしてそこであんじぇは、おすかー君の誕生パーティが中止になったことを知りました。
「あの、わたし、おいわいしたくて…おすかーせんぱいにあえますか?」
 あんじぇは執事と呼ばれる人に尋ねました。とにかくおすかー君に会わなければ、何もわからないからですね。ところがその執事が言うにはおすかー君はパーティの中止を命じて一人で何処かへ出掛けてしまったというのです。主役が何処かへ行ってしまったら、当然パーティは中止でございますね。

「おすかーせんぱい、もしかしてせいちにいってしまったのですか?」
 あんじぇは思い切って訊ねました。執事はえ?という顔をして、そしてまじまじとあんじぇを眺めました。そういえば最近おすかー君がとても気に入っている一人の女の子の話をしていたのを思い出したのです。

『ふわっとした金色のかみのけに、こきょうのそうげんみたいな、みどり色の目がとってもきれいなんだ。それからとてもかわいい声でおななしするんだぜ?』
 おすかー君にしては珍しくちょっと照れながら、そして聞きもしない事をぺらぺらと喋るその姿は年相応にとても微笑ましかったのでよく覚えておりました。いつものクールで幼いながらもプレイボーイと仇名されているおすかー君とはまるで別人のようでございました。
 
「もしかしてあんじぇりーく様、でございますか?」
「はい…?」
 近い内に館に招待するとは聞いていましたが、今日だとは。なんとも皮肉な話であると執事は思いました。きっとおすかー君はこの女の子になら何時でも会いたいと思っているでしょう。
「そうですか…あんじぇりーく様ならお教えいたしますが、…確かに聖地から女王陛下の御使者の方がいらしたのです。しかしおすかー様は聖地には行ってはおりません。御安心ください。ですが…少々ムズカシイお話がございまして…おすかー様もお一人で考え事をなさりたいのだと思います。」
「じゃあ、おすかーせんぱいはどこに?」
「それが…わたくし共にも分からないのです。どちらにおいでになったのか…。ただちょっと出掛けてくる、とおっしゃって。」

「あぐねしかがおすかー様と一緒でございますから、行き先についてはさほど心配はしてはおりませんが…。」
 あんじぇはおすかー君の居場所に心当たりがございました。以前連れて行ってもらった公園です。『太陽の公園』というその場所にきっといると思えました。
「あの、おすかーせんぱいは、きっといつもいっしょにあそんでいるこうえんにいるとおもいます」
 なるほど、と執事は気が付きました。
「あんじぇりーく様ならば…おすかー様はきっとお会いしたら、お喜びになると思いますよ。行ってあげてくださいますか?」
「はいっ!」
 元気のよいお返事に思わず執事もにっこりとしてしまいました。

 あんじぇはヴィクトールに頼んで、公園まで馬車で連れていってもらいました。すると案の定、公園の入り口にあぐねしかが繋がれておりました。確かにおすかー君はこの公園にいるようです。
 きっとここでおすかー君に会えるでしょう。馬車を飛び降りてあんじぇは走り出しましたが数メートル行ってから慌てて振り返りヴィクトールにお礼を言いました。
「ヴィクトールさん、ありがとうございます。わたし、おすかーせんぱいといっしょにかえりますから、だいじょうぶです。ろざりあにそういってくださいね!」
 そしてヴィクトールの返事も聞かずに走って行ってしまいました。

 公園に入ってあんじぇは一直線にある場所に向かいました。ここにおすかー君と来た時には必ず行く花壇の前のベンチです。
 一生懸命走ってベンチが見える所まで来るとあんじぇの予想通り、そこには赤い髪のおすかー君がぽつんと座っておりました。
「おすかーせんぱい!」
 あんじぇは嬉しくなって大きな声で呼びました。
 
 ぱっとこちらを見たおすかー君の顔から寂しさが消えて笑顔が広がりました。いつものおすかー君です。あんじぇはおすかー君の前に走り寄りました。

「おじょうちゃん、どうしてここに?…今日はあのおひめさまのパーティだろう?おいしいケーキは食べられたかい?」
 先に口を開いたのはおすかー君でした。そしてそれはあんじぇの事を思いやる内容でございました。どこまでもあんじぇに優しいおすかー君ですね。
 あんじぇはおすかー君にたくさん聞きたい事がありました。でもまず最初にこれを言わなくてはなりません。
「おすかーせんぱい…あの、あのね?きょうはおすかーせんぱいのおたんじょうびなんでしょう?わたし、しらなくて、ごめんなさい。」
 少しの間黙って、それからおすかー君はあんじぇに笑いかけました。そして愛しそうに彼女の頭を撫ぜました。
「おじょうちゃんがあやまることはないぜ。それにぐうぜんとはいえここで会えたんだからな。うれしいぜ?」
「ぐうぜんじゃないです!わたし、おすかーせんぱい、さがしてたんです」

「これ!」
 あんじぇは両手にリボンのついたかわいい包みを乗せて差し出しました。その仕草がとっても可愛らしかったのでおすかー君は思わず微笑んでしまいました。
「あの、クリスマスプレゼントにって、つくったんです。でもきょうがおたんじょうびってきいたから、そっちにします!」
 お礼を言って受け取るとおすかー君はすぐにその包みを開けました。可愛い動物の形や、ちょっと正体不明な形のクッキーがそこには並んでおりました。一つ手にとって口に運ぶと、甘くてさくさくしていて、なんとも幸せになれる味が広がります。
「おたんじょうび、おめでとうございます。これね、ママに手伝てつだってもらって、イッショウケンメイつくったんです。」
「うまい、とってもうまいぜ、おじょうちゃん。」
 おすかー君はお世辞抜きに言いました。
「おじょうちゃんはこういうのが上手なんだな。しょうらいがたのしみだぜ」
 ついでにこれを作っている時のあんじぇのエプロン姿はめちゃくちゃ可愛いだろうななどと想像してしまいました。

 公園は日当りがよく、冬に咲く花が花壇を彩っておりました。時々吹く風に花が揺れて少し儚げな風情でございます。おすかー君もあんじぇも黙ってその様子を眺めておりました。いつもは楽しいお話を沢山してくれるおすかー君が、今日は何故か黙っているのであんんじぇは少し不安になってきました。でもここでちゃんと聞いておかないと後でとても後悔するのは目に見えております。思い切って聞く事にしました。

「おすかーせんぱいが、せいちのばしゃにのっていったって、りゅみえーるせんぱいからきいて…もうせいちにいってしまったのかなってそれでさがしてたんです。」
 おすかー君はちょっと驚いた顔をしました。でもりゅみえーるに見られたというのなら、仕方ございません。逆に彼もまた「水一族」でございますから、聖地に関わる事をそうそう軽く口にしてはいけない事は充分知っているはずですが、あんじぇだから教えたと言う所でしょう。
「そうか…たしかにせいちの女王さまからのお使いの人が来た。だがおじょうちゃん、よく知ってるな、これはまだみんなにはないしょなんだぜ」
「え!?そうなんですか?」
 そんな秘密の大事なお話を聞いてはいけないような気がしました。でもあんじぇのそんな心配を余所におすかー君は話を続けました。

「今の『ほのおのしゅごせい』がやめることがきまったんだそうだ。だからおれにつぎのしゅごせいとしてせいちにくるようにという知らせが来たんだ。」
 やっぱり不安的中でございました。でもこれがとても大事な事で名誉な事なのはあんじぇにだってわかります。
「おすかーせんぱい、しゅごせいさまになるんだ…」
「ことわれないんだそうだ。」
「どうして?とってもすごいです。じょおうさまといっしょにおしごとできるなんて!」
「だがな…そのときにはせいちというばしょへ行かなくてはならないんだぜ?」

「とおいんですか?なかなかあえなくなっちゃうとか?」
「とてもとおいんだそうだ。それから何年もかえれなくなるらしい。」
 おすかー君も詳しく知っているわけではなかったのですが、聖地という所へ行ったらすぐには帰って来れない事は聞いて知ってました。
 一度行ったらもう家族にも、そして大好きなあんじぇにも会えなくなってしまうかもしれない。そう思うとさすがのおすかー君も悲しくなってしまったのでした。
 あんじぇもそこまでは考えなかった、というより知らなかったのでショックを受けました。でも考えたら当たり前でございます。何処かも分からない遠い場所に行ったのなら、下手をすれば一生会えなくても不思議ではありませんから。

 どうしよう、何と言ったらいいのか分からなくて、でも悲しくてあんじぇはまた黙って下を向いておりました。
「おすかーせんぱい、いついってしまうんですか?すぐ?」
 あんじぇが泣きそうな顔で聞きます。
「いや、すぐじゃないんだ。いまのしゅごせいがやめることがきまっただけなんだ。」
 少し間を置いておすかー君は続けました。
「おれがしょごせいになるのはたぶん何年か先だろうと言われたが、たしかじゃない。」
 それを聞いていてあんじぇは少し安心しました。
「よかったー。あのね、あしたとかふゆやすみがおわったらいっちゃうのかとおもっちゃいました。まだまだいっしょにあそべますね。」
「いや、それが…」

 おすかー君が言うにはこれから守護聖になる者としてたくさん勉強しなければならないというのです。先程来た使者は、まず手始めにいくつかの本を読むようにと置いていきました。厚さが10cmもあるような大きさのその本は豪華な革表紙で、金色の題字が入っておりました。
 「守護聖の心得・炎編」と書かれたそれは炎の守護聖として聖地に行く前におすかー君が頭に入れておかなくてはならない内容なのだそうです。しかもこれ一冊だけではなく、まだまだ色々な参考書がこれから届くのだそうです。

「しかもべんきょうだけじゃないんだ。せいちをまもる、ほのおのしゅごせいは『けんのたつじん』じゃなければならない。けんとたいじゅつのけいこをこれから週3回にふやさなければならないんだ。」
 学校の勉強だけではなく守護聖としての勉強、剣などの訓練などこれからのおすかー君は目も回る程忙しくなるのでございます。お友達と遊んでいる時間が果たしてあるのでしょうか?元々おすかー君は忙しいのも勉強も別にそれ程苦痛だとは思いませんでしたが、あんじぇと遊べなくなるというのが、どうにも辛く我慢が出来ないのでございました。

「しかもときどきせいちに行かなくてはならないんだそうだ…。」
 ふうっとため息をついておすかー君は空を見上げました。
「これじゃあ、おじょうちゃんとまったくあそべなくなってしまうな…。」
 
 クッキーをもう一つ食べようと包みの中身をもう一度眺めたおすかー君はひとつ気が付きました。
「おじょうちゃん、…これは?」
 一際大きなクッキーが入っていたからです。摘み上げると大きなハート型に赤いアンジェリカで飾りが付いていました。
「クッキーろざりあにもつくったんですけど、あの、おすかーせんぱいにはとくべつにこれ…」
 おすかー君はゆっくりとそれを食べ始めました。
「これはまるでおじょうちゃんのハートのようだな」
 おすかー君がそう言うとあんじぇはにっこりといたしました。

 あんじぇはじっと考えました。おすかー君がとっても忙しくなり、遊べなくなってそして聖地に行ってしまったら、どうしようかと。でもとてもいい事を思いついたのです。
「おすかーせんぱい!わたしもせいちにいきます!」
「は?」
「いっぱいおべんきょうしてすばらしいひとになったらせいちでおしごとができるのでしょう?」
 あんじぇは小さい手に小さい握りこぶしを作ってガッツポーズをいたしました。そうです、主星でのエリートコースの頂点は、聖地に就職することなのです。子供達も将来の夢は?と聞かれて「聖地でお仕事をする」と答えるのはとても普通でございます。

「わたしもがんばっておべんきょうしてせいちでおしごとします!それならずっといっしょにいられます!」
 ね?とあんじぇはおすかー君の方を向きました。
「わたしもおすかーせんぱいといっしょにおべんきょうしたいです!むずかしいことやわからないこととか、おしえてください。」
 これから長い時間拘束される勉強時間も、あんじぇが一緒ならばそれはなんと楽しい時間なのでしょうか。おすかー君はあんじぇの申し出に天にも昇る思いでございます。

「せいちにいかれたら、そのときはおすかーせんぱいの『ぶか』にしてくださいね!」
「あ、ああ、もちろんだぜ。かわいいきみのおねがいだし。だがおれのねがいでもあるしな。…でもいいのか?いちどせいちに行ったらなかなかパパやママに会えなくなってしまうんだぞ。」
 あんじぇはもじもじしながら答えました。
「おとなになったらきっとだいじょうぶです。おすかーせんぱいがいれば…。」

「あ!それからけんも、ならわなくっちゃ!おすかーせんぱいをまもるのもわたしのおやくめだわ!」
 何か少し違うかもしれないとおすかー君は思いましたが、それは言わないでおきました。剣の稽古の時間もあんじぇといられるなら、それに越した事はありませんものね。

 おすかー君はさっきまでの寂しい気持ちがどこかに飛んでいってしまった気分でした。そして大人になってとっても綺麗になったあんじぇを連れて歩く自分を想像して、思わずにやけてしまいましたが、下を向いて誤魔化しました。
「さっきのハートのクッキーはあんじぇのハートなんです。あんじぇのハートはもうおすかーせんぱいがうけとってくれたから。」
「ははは、それでおれももうさみしくなくなったんだ!」
「あんじぇもさみしくないです。」

「おすかーせんぱい?あのね24日おうちでやるクリスマスのパーティね、あそびにきてくれませんか?」
 あんじぇの申し出におすかー君は驚きました、がすぐに嬉しさが込み上げてきました。いわゆる豪華なパーティに招待されるのはよくある事でございますが、普通の家庭のホームパーティに誘われるとは。家族同然に親しくお付き合いをする間柄という事ですから、おすかー君にとって、こんなに嬉しい事はありませんでした。
「ママがもしこのハートのクッキーをたべてくれたなら、おうちのぱーてぃにごしょうたいしなさいなって。ママ、おすかーせんぱいにあってみたいって」
「それは、とってもうれしいぜ。たのしみにしているよ、おじょうちゃん」

「さ、もう日がかたむいてきたな。さむくなるまえにかえろうぜ」
「はい!」
 二人は歩きながらたのしそうに喋り続けます。
「あ、そうだ!おすかーせんぱい、これ、ろざりあからのぷれぜんと!」
 手渡されたそれはとてもかわい天使の飾りでございました。
「これは…あんじぇにそっくりだな」
 あのおひめさまがね、とも思いましたが、あんじぇに似ているこの天使はおすかー君の宝物の一つになるでしょう。
 これから時々聖地に勉強をする為に行く時はあんじぇの写真とこれを持っていこうと思いました。
 
 公園の木の影も少しずつ長くなる時間ですが、二人で手を繋いで歩くと寒さなど微塵も感じません。おすかー君は思います。さっきまではあんなに寒かったのに今はとっても暖かい気持ちです。きっと天使のハートが体の中に入ったからでしょう。
 おすかー君は今日の事を一生忘れないし、そして記念すべき今日の日の事を詳しく日記に書いておこうと思いました。

「ずっといっしょにあるいていこうな」
「はいっ!」



おまけ

「あのね、おすかーせんぱい。ママのとくいりょうりは『チキンのホワイトソースのパイづつみやき』なんです。楽しみにしていてくださいね。」
「え!?」

守護聖の心得 第12章 21項
 守護聖たる者、食の好き嫌いは他人に悟られてはならない。
 常に万人の理想となる事。

 おすかー君最初の課題、決定ですね。


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── to be continued♪

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