◇□◇ 「おしまいっ」 アンジェリークは手にした本を勢いよく閉じた。 「ね、素敵なお話でしょ。」 傍らにいる赤い髪の青年ににっこり笑いかける。 「アンジェリーク」 「はい?」 「どうでもいいが、その男に『おすかー』ってつけて呼ぶのは止めてくれ。」 「えーっ。だって炎の守護聖といえば、やっぱりオスカーさまでしょう? それに、カッコいいじゃないですか。」 (かっこいい? どこがだ?) そう思ったオスカーだが彼女の満面の笑みを見ると何も言えなくなってしまう。 気を取り直して口を開いたときには、既に数分の時が経っていた。 「で、その『カッコいい』男と俺と。君の好みはどっちなんだ?」 アンジェリークは数瞬きょとんとした。そして大笑いしだした。 「やだ、オスカーさまったら。もちろん、オスカーさまの方が何百倍もカッコいいですってば。」 「お嬢ちゃん、そういう台詞を笑いながら言うと効果がないって知っているか?」 穏やかな昼下がり、の一コマだった。 FIN BACK HOME