H A N A B I

2001.8.4 葉魅兎



全てを焦がす勢いで燃え盛る太陽が、微かな残滓を残して沈んで久しい。
今はただ静寂と僅かに涼を齎す漆黒の夜が、君ごとこの空を覆っている。

漆黒だけが佇む空を、待ち侘びた様子で見上げる君の横顔。
夜に沈んだ世界の中、唯一オレに希望を見せてくれる灯火。
誘うように揺れ、拒むように震え、求めるように手招く姿。
それは誰よりも強く、激しく、オレを惑わせる夜に煌く炎。

手を伸ばそうとしたオレを諌めるように、低い轟音が貫いた。
君の目が輝いて、夜空に鮮やかに咲く華の到来を教える。
一瞬だけ弾けて花開く彩の洪水を受けて、君の笑顔がまた輝く。

暑い空気に華やぎを添えながら儚く消えるどの華よりも、
君の笑顔のほうがどれほどにオレを捉えて離さないだろう。

何も知らず無邪気に微笑み、空だけを見ていられるのも今のうちだぜ?
きっと君はオレしか見えなくなる……、
もはや君しか見えないオレと同じように、な。

オレの心を捉えた代償は大きいぜ?
この夏よりも熱い夜を覚悟しておくんだな、お嬢ちゃん。



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